伝統的工芸品は、伝統工芸士が造る"剛直にして優美な"匠の技が冴える特別な逸品です。
古い歴史をもつ岩谷堂箪笥は昭和54年、岩手県の推薦をうけ伝統的工芸品産業振興法の認定を申請しました。以来3年間の厳しい調査・審査をうけ昭和57年3月5日その伝統的意匠、材質、組立工法、手打金具の技法、漆塗装等総合的技術が認められ承認されました。
歴史ある重厚な気品と意匠、研きぬかれた技術を皆さまのお手許に、そして後世に伝えるべく努力してまいりたいと存じます。
なお、伝統的工芸品技法による製品のご注文は、すべて特別注文となります。
このマークは、伝統的工芸品を示すマークとして決められたもので、伝統的工芸品産業振興協会が商標の登録をしております。
経済産業大臣指定伝統的工芸品にのみ貼付できる伝統証紙は、産地組合が実施する検査に合格した伝統的工芸品をあらわしています。
岩谷堂箪笥の製造工程
◆木地
岩谷堂箪笥は、永い年月を経た大切な欅(けやき)を使用しています。
まず原木を製材します。
あばれない(狂わない)ように「木枯らし」をおこないます。(木枯らしとは材料と材料の間に桟をはさみ、風通しを良くしながら何年も自然乾燥させること)
こうして乾燥させた狂いのこない材料から、無駄なく用途に応じた材料取りをおこないます。これを「木取り」と呼び、熟練された技術が必要とされます。さらに「細工」と呼ばれる組立てをおこないます。
これらの作業はいまだに一貫した手作り作業でおこない、お客様にいつまでもお使いいただける岩谷堂箪笥を作り上げていきます。
◆漆塗装
最近の遺跡の発掘でも、たびたび漆を使用した道具が発掘されているように、漆は縄文・弥生の時代から使用されてきました。外観の美しさはもちろん、重厚さ、耐久性においても非常に優れています。昔から岩手県は日本を代表する漆の産地で、平泉文化を華麗に装飾した漆塗装の技術が今も岩谷堂箪笥に生きています。
漆塗りには、代表的なものに拭き漆塗りと透明の木地蝋塗りがあり、塗っては拭き、塗っては磨くという工程を何度も繰り返します。
木地蝋塗りは次のようにおこなわれます。
- ■細工された木地に水をつけて砥石で研ぐ。
- ■研いだ木地に漆と砥粉を混ぜ、ヘラで塗り、乾燥させて研ぎ出す(下地)。
- ■次に生漆だけをヘラで塗る。
- ■乾燥させて、また丹念に研ぐ(下地押さえ)。
- ■刷毛で塗っては研ぐを数回繰り返す(中塗り)。
- ■刷毛で上質の木地蝋漆を塗りさらに研ぐ(上塗り)。
- ■最後に摺漆を数回。そのたびに磨きを入れます。
漆は、湿度の変化や気候の移り変わりに応じて、まるで呼吸するようにその特性が生きて、弾力性を保ち続けます。そして、木も生きています。置かれる環境により変化することがあります。使用するに従い、自然と塗肌に落ち着きが出て、年月が経つに従って杢目の美しさと、漆本来の味わいが出てきます。
◆手打ち金具
「手打ち彫り」は、まず、唐草や唐獅子、龍などの下絵を描きます。この意匠(デザイン)は、永い間伝えられてきたものです。
この下絵を鉄板に貼ります。この鉄板を金槌と自分で作った鏨(たがね)を使い裏から打ち出し、表から線刻して絵模様をいきいきと浮かび上がらせるように打ち出していきます。裏返して膨らみをさらに出し、最後に鑢(やすり)をかけます。
出来上がったものに錆止め、色上げをし、仕上げます。
◆仕上げ
塗り上がった木地に引手や角金具、蝶番、錠前金具等をつけ、完成します。